研究概要 |
今までにタバコF1植物(Nicotiana glauca x N.langsdorffii)を用いてN.glaucaに存在し、Agrobacterium rhizogenesのrol遺伝子と相同なNg rol遺伝子が腫瘍組織でのみ発現していることを見出した。また、腫瘍状態の組織で特異的に発現する17のcDNAクローンを単離している。平成7年度は、タバコのF1雑種植物とその両親、および、他のタバコ属植物(Nicotiana tabacum)を用い、下記のような結果が得られた。 (1)レポーター遺伝子としてGUS遺伝子を用い、Ng rol遺伝子発現に影響を与える因子の検索とcis因子の解析を行なった。その結果、Ng rolB,Ng rolCは組織特異性と植物ホルモン応答性に関して、発現活性こそ1/2〜1/3に低下しているが、Ri rolB,Ri rolCと同様なシス領域を保持している。 (2)Ng rolBはタバコ(N.tabacum)に対して、Ri rolBの示す毛状根形成活性を示さない。 (3)17の遺伝的腫瘍特異的cDNAクローンのうち、クローンTID771は両親のカルス細胞でも発現せず、植物ホルモン(オーキシンとサイトカイニン)およびストレス関連物質(アブシシン酸、サリチル酸)ジャスモン酸メチル)にも反応しない遺伝的腫瘍特異的クローンである。 (4)クローンTID771の抗体を作成し、ウェスタンブロッティングで調べた発現の時間的経過はmRNAの蓄積と同様に、奇形腫の原基の形成時期に対応している。 (5)クローンTID771の翻訳産物は腫瘍組織の表層に分布している。
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