研究概要 |
液胞形成に関わる液胞プロセシング酵素と液胞の機能的な変換における膜タンパク質の変動と主要膜タンパク質の構造解析について下記の成果が得られた. 1.細胞が機能的な転換を図ろうとするとき,不要になった細胞内成分の積極的な分解が必須であるが,この選択てきな分解に液胞プロセシング酵素(VPE;Vacuolar processing enzyme)が関わっている可能性を検討した.液胞プロセシング酵素は液胞タンパク質の成熟化に関与する酵素である.アラビドプシスのゲノミックライブラリーから単離した3種類の液胞プロセシング酵素の遺伝子(αVPE,βVPE,γVPE)のプロモーターにGUS遺伝子をつないでシロイヌナズナとタバコに導入し,それぞれの発現様式を解析した.その結果,αVPEとγVPEのプロモーターが老化子葉などの組織で発現していたが,γVPEプロモーターは特に老化が始まる前から強い発現が見られた.一方,βVPEプロモーターは上記の種子細胞の液胞変換時に働いていることが分かった. 2.液胞-プロテインボディ相互変換における膜タンパク質の役割を解明する目的で,膜成分の解析を行った.種子細胞において,プロテインボディから液胞への変換が起こる過程で,膜の流動性が上昇すること,またトノプラストのタンパク質が大きく入れ替わることを示した.乾燥種子のプロテインボディに特異的に蓄積する4種類の膜タンパク質(MP23,MP27,MP28,MP32)のcDNAを単離し,それらの構造を明らかにした.MP27とMP32はプロテインボディ膜の内側に表在しているが,一本のポリペプチドとして合成され液胞へ輸送された後に,液胞プロセシング酵素によって2本のタンパク質に分断されることが分かった.一方,MP23とMP28は6つの膜貫通領域を有するα-TIP(tonoplast intrinsic protein)であるが,種子の液胞に特異的なα-TIPの生理学的な機能を解明する目的で,MP23とMP28の2つの膜タンパク質を酵母の液胞膜で発現させることに成功した.
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