研究概要 |
研究課題を達成するため、提唱した四つの目的各々に対して以下に記す成果を挙げた。 1.Rel/lκB複合体を活性化するシグナルの解析:Rel蛋白質の活性化には制御因子lκB蛋白質のシグナルに依存した急速な分解による不活化が必要である。lκBの分解を分子レベルで解明するため、lκB中に存在する分解に必須な領域を同定した。その結果、lκB分子C末端側のPEST配列は分解に必要でなく、分子中央に存在するアンキリンリピート構造を欠失させると外来シグナル存在下でも安定であることが明らかとなった。 2.Bcl-3による癌化機構の解析:Bcl-3とc-Ablが各々のプロリンに富む領域及び、SH3領域を介して結合することを明らかにした。しかも、その相互作用によりc-Ablのチロシンリン酸化活性が上昇することを見出した。Bcl-3による癌化機構の解明に、新たな糸口がつかめると考えられる。 3.アフリカツメガエルの胚発生におけるrel関連遺伝子の機能:アフリカツメガエルのrelB及びlyt10遺伝子cDNAを単離し、胚発生の各段階及び成熟後の各臓器における発現を解析した。現在それぞれの産物に対する抗体を用いて発現部位及び細胞内局在性について解析している。 4.B細胞分化におけるRel蛋白質の機能:CD40からのシグナルはB細胞受容体からのシグナルによって誘導される細胞死を抑制する。我々は、細胞死を制御するCD40のシグナルを解析し、このシグナルによってRelが活性化されること及びBcl-X_L,CDK4,CDK6蛋白質の発現誘導が起こることを見い出した。種々のCD40の変異体を用いてRelの活性化及びbcl-x遺伝子の発現誘導に必要な領域を同定した。今後、細胞死抑制におけるRel蛋白質の必要性を詳しく解析する。
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