研究概要 |
某基幹病院においてHCV関連肝がん84例を選択し、病例に性・年齢を1:1でマッチさせた健常対照群を選択したが、うち、HCV関連肝がんは68例(男50例、女18例)であった。病例群と対照群に対して生活環境要因(食生活などの生活歴、飲酒歴.喫煙歴、既往歴.家族歴、受療歴など)を網羅した質問票を用いて面接調査を行った。症例郡群HCV感染経路としての輸血歴が多く、そのオッズ(OR)比と95%信頼区間(95%C.I.)は4.0(1.7〜9.1)であった。飲酒歴(特に大酒歴のあるもの)・喫煙歴も症例群に多く、そのORはそれぞれ2.5(1.2〜5.5)、2.6(1.2〜5.7)であった。症例群と対照群から採取したリンパ球を用いたアルコール代謝関連遺伝子多型分析も行ったが、症例群と対照群の間にALDH2、CYP2E1及び両者の組み合わせに差異は認められなかった。 某血液センターにおける無症候性HCVキャリア4,392例(男2,095例、女2,297例)を把握し、平均2.1年間フォローアップした。当該市区町村役所に対象者の生死を照会し、死亡者については死亡診断書記載事項証明書を入手して、肝がん死亡リスクを直接評価した。対象者中の観察死亡数を集計し、期待死亡数は対象者人年に1992年の全国の原因別・性別・年齢階級別死亡率を掛け合わせて求め、観察死亡数、期待死亡数とその比(O/E)(95%C.I.)を計算した。肝がんの観察死亡数、期待死亡数、O/E比は、男でそれぞれ8、3.08、2.60(1.12〜5.12)、女でそれぞれ1、0.60、1.67(0.04〜9.29)であり、男の肝がんに特異的に統計学的に有意な高まりを認めた。そのリスクは献血時のGPT値に比例して上昇していた。なお、その他の死因に関しては、本対象集団に高まりを示すものはなかった。 慢性肝炎患者に対するインターフェロン治療効果、特に、ジェノタイプ・ウィルス量別に肝硬変・肝がんへの進展の差異を調べるために、某基幹病院において、平成3年からのHCV慢性肝炎に対するインターフェロン治療患者約200例をフォローしているが、未だに肝がん症例数が十分ではなく、今後のデータ蓄積が必要である。 なお、当初、HCVジェノタイプ検索については外注として予算を計上していたが、本学内に協力研究者を得て実施したので、その研究費は当該分析に対する消耗品費等に充てた。それ以外は当初の研究計画そって、適正に執行した。
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