研究概要 |
1.肺癌の組織学的特徴の経年変化を調べるために、1990-94年と1970-74年との間で比較した結果、組織型では腺癌が,腺癌の分化度では中分化癌が,それぞれ有意に増加していた. 2.肺の腺癌において、分化度と喫煙との関係を調べた結果,分化度が低くなるほど喫煙指数が高くなることが示された. 3.6価クロム曝露者およびトロトラスト被注入者の肺腺癌を,各々1例と4例とを収集した.例数が不十分で結論的なことは言えないが,クロム曝露者の腺癌は肺の中心部に発生し低分化型であり,トロトラスト患者の肺癌は4例とも肺の抹梢に発生していた. 4.当病院で切除された118例の腺癌を用いて,腺癌の亜型別 (分化度別および細胞型別) に染色体の欠失頻度をサザン・ブロット法で調べた結果,高分化型で8qの欠失頻度が中低分化型に比べ有意に高く,細胞型では多角型 (低分化型が多い) で17pの欠失頻度がその他に比べ有意に高かった. 5.結論として、肺の腺癌のあるもの (分化度別では中分化および低分化型,細胞亜型別では多角型) は,吸入発癌物質が発癌に関与していると考えられる.
|