研究課題/領域番号 |
07273241
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菊池 章 広島大学, 医学部, 教授 (10204827)
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研究分担者 |
岸田 昭世 広島大学, 医学部, 助手 (50274064)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1995年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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キーワード | G蛋白質 / RalGDS / Ras / Ral / がん |
研究概要 |
私共はRalGDSがRasの新しい標的蛋白質であることを提唱しているが、本年度の研究では細胞外シグナル依存性のRasからRalGDSへのシグナル伝達機能の解析を行った。c-RasとRalGDSをトランスフェクションしたCOS細胞をEGFで刺激すると、EGFの濃度依存性にRalGDSはc-Rasと結合した。AキナーゼはRafを直接リン酸化して、Rasとの結合能を抑制し、その結果RasからRafへのシグナル伝達系を阻害することが知られている。RalGDSもRafと同様にAキナーゼによりリン酸化されたが、RalGDSのリン酸化はRalGDSのRas結合活性やRalに対するGDP/GTP交換反応促進活性に影響しなかった。さらに、Aキナーゼを活性化するForskolinでCOS細胞を前処理することによりEGF依存性のRafの活性化は抑制されたが、RasとRalGDSの結合は変化しなかった。Rapは低分子量G蛋白質の一種であり、Rasと拮抗的に作用することが知られている。RapはRasと同様にRalGDSに結合し、さらに、RapはRasとRalGDSの結合を阻害した。以上の結果から、RalGDSは哺乳類の細胞においてRasの標的蛋白質であることが明らかになり、Rasの細胞内シグナルに伝達機構はRafを介する経路とRalGDSを介する経路が存在することが決定的になった。また、RasからRafとRalGDSに伝達されるシグナルはAキナーゼとRapにより選択的に制御されていると考えられる。私共はRalGDSのC末端側にRasと結合する部位(RID)が存在することをすでに明らかにしている。アフリカツメガエルの卵細胞にRIDを導入すると、活性型Ras依存性の卵成熟は抑制されたが、プロゲステロン依存性の卵成熟は抑制されなかった。活性型RasでトランスフォームしたNIH3T3細胞にRIDを導入すると、低濃度血清中での増殖能や寒天培地中での増殖能が抑制された。しかし、活性型RafでトランスフォームしたNIH3T3細胞にRIDを導入しても、変化は認められなかった。これらの結果はRalGDSが細胞内でRIDを介してRasと結合し、そのシグナルを伝達することを示すものである。さらに、RIDはRasの機能阻害剤として、シグナル伝達機構の解析やがん治療薬の開発へ応用できる可能性があると考えられる。以上、本年度の研究は予定通り進行していると判断しているが、今後もさらに詳細な検討を続けて、Rasの新しい標的蛋白質RalGDSの生理機能を明らかにしたいと考えている。
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