研究概要 |
TecファミリーはTec, Btk, Itk/Tsk/Emt, Txk, Bmxの5種類のメンバーからなり,非受容体型チロシンキナーゼの中で2番目に大きなサブファミリーを形成する。このファミリーに属するキナーゼは、N末端よりPleckstrin homology (PH) domain、Tec homology (TH)domain、SH3 domain, SH2 domain, Kinase domainを持ち、またミリスチリン酸結合部位は存在しない。中でもTecキナーゼは骨髄系血液細胞、造血前駆細胞に発現が豊富であり、サイトカインの細胞内シグナル伝達機構との関与が注目されてきた。実際我々は、Tecがinterleukin (IL) -3, IL-6, G-CSF, GM-CSF, Erythropoietin (Epo), stem cell factor (SCF), FIt3/FIk2-ligand (FL)ら広範なサイトカイン刺激でチロシンリン酸化されかつ活性化されることを明らかにした。しかもTecはSCF, FL, IL-6の受容体であるc-Kit, FIt3/FIk2, gp130それぞれと細胞内で会合する事が示され、特に前2者においてはTHドメインを介する結合であることも確認された。これらの結果はTecが骨髄系血液細胞に働くサイトカインのcommon signal transducerであることを示唆する。しかもtecに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを添加することでFL+IL-6による造血前駆細胞の増殖が阻害されることも示され、Tecが細胞増殖シグナルに関与することが明らかになった。したがってTecを介するシグナル伝達機構を分子レベルで解析することは、血液細胞の増殖機構に関して極めて重要な知見を与えると考えられた。
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