研究概要 |
接触系凝固因子の1つである活性型高分子キニノーゲン(HKa)が血漿中に存在する最も強力な癌細胞接着抑制因子であることを申請者らは見い出した(Asakura, S. et al. 1992, J. Cell. Biol. 116, 465-476)。その作用機作として癌細胞接着に最も重要と考えられているβ3-integrin receptor-ligand相互作用の抑制であることが判明した。癌重点研究よりの助成を受け、本年は以下のことを検討し、実験結果を得た。 HKaがanti-adhesion作用を有するためにはkallikreinで切断されることが必要である。HKaのいろいろなmonoclonal抗体を用い、HKaのanti-adhesion中和実験及びHKa軽鎖のcDNAをPET3a vectorに入れ、Bacteriaでexpressしたrecombinant protein (γHR-D)の実験から、HKaには、anti-cell adhesion domainとsurface binding domainとが存在することを確認した。さらに関連ペプチドを作成し、各々のdomainを同定した。驚くべきことにHKから放出される下記の3つのactivation peptides (P1, P2, P5)が細胞接着活性を示した(P1; GKEQGHTRRHDWGHEKQRK, resiues402-420 : P2; HNLGHGHKHERDQGHGHQRG, residues421-440 : P5; HKHGHGHGKHKNKGKKNGKH, residues 479-498)。 これらのペプチド(1mM)とB16 Cells (5×10^5 cells)を混合したのち、BALB/Cマウスに尾静脈より投与し、3-4週間後、B16 Cellsの肺転移について検討した。肺転移抑制はP5>P2で、P1の肺転移抑制は認められなかった。さらにheparinにより強いmodulationを受けることが判明した。
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