われわれは、RasのGTPaseの活性を促進することによりRasを負に制御する新規因子としてとしてGapl^mを単離しその構造を決定した。本年はGapl^mの機能喪失と遺伝性疾患との関連を探るために染色体マッピングを行なった。またGaplP^mには複数の機能ドメインが存在するが特定の領域のみを欠く分子種の存否を調べるためにRT-PCR法を用いてmRNAの選択的スプラシシングについて検討した。 ラットGapl^mcDNAをプローブとして用いヒト脳cDNAライブラリーをスクリーニングし、ヒトGapl^mcDNAを得た。cDNA構造解析の結果、ヒトGapl^mは853アミノ酸より成るタンパク質であり、その配列はラットGapl^mと90%の同一性を示すことが判明した。またGaplファミリーとして昨年報告されたヒトGaplIP4BPとヒトGapl^mはアミノ酸レベルで60%の相同性を示し別個の遺伝子産物であることも明確に示された。ついでヒトゲノミックライブラリーをスクリーニングすることによりGapl^m遺伝子の一部を含むファージクローンを単離し、これをプローブとしてFISH法により詳細な染色体マッピングを行なったところ3q22-23領域に存在することを示す結果が得られた。これは将来のヒト遺伝性疾患との関連を探る上で重要な結果である。 ラットの各組織よりmRNAを抽出しそのcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型としてGapl^mの各ドメインを増幅する各種のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いてPCR反応を行なった。その結果、2番目の脂質結合部位(C2領域)を欠く分子種、およびGAPドメインを欠く分子種が存在することが判明した。選択的スプライシングを受ける分子種の割合は組織によって差があるが、完全長の分子種の比べて20-50%の割合で存在することから、生体内においても何らかの機能を担っている可能性が高い。
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