研究概要 |
本研究では、陸と海の動植物、微生物を素材として新しい作用機序をもつ抗がん物質の探索と開発を目的としている。従来の殺細胞活性に加えて、今回、チロシンキナーゼ、チューブリン、P-糖蛋白質などの新しい分子標的をスクリーニングに加え、以下のような結果を得た。 日本産イチイTaxus caspidataの抽出物より新規タキサン化合物Taxuspine D,E,F,G,H,Jを分離し化学構造を明かにした。このなかで、Taxuspine Jがベラパミルと同程度のP-糖蛋白質機能阻害作用を、Taxuspine Dがタキソ-ルの1/2-1/3程度のチューブリン脱重合阻害活性を示すことを見い出した。海綿動物(Spongidae科)より分離した新規キノン化合物Nakijiquinone CとD、および海綿Psammaplysilla pureaより分離した新規アルカロイドPurealidin J,K,P,Qにチロシンキナーゼ(C-erbB-2またはEGFレセプター)阻害活性を示した。また、海洋細菌Flavobacterium sp. の菌体抽出物より分離したセラミドFlavocristamide AとBにはDNAポリメラーゼαに対する顕著な阻害活性が認められた。一方、培養腫瘍細胞L1210およびKB細胞に対する新規殺細胞活性物質として、渦鞭毛藻Amphidinium sp. の培養藻体よりマクロリドAmphidinolide OとPを、海綿より環状ペプチドKeramamide E、アルカロイドPurealidin N、 ならびにステロイドXestobergsterol Cを、またホヤPseudodistoma kanokoよりピペリジンアルカロイドpseudodistomin Cを分離し、それらの化学構造をスペクトルデータ、分解反応、または化学合成に基づき明かにした。
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