研究概要 |
本研究では以下の成績を得た。(1)IFN-γ遺伝子導入乳癌細胞SC115(Muγ)を癌細胞ワクチンとして用いて,親癌細胞SC115の皮下担癌マウスに対して治療効果を検討したところ,有意の癌増殖抑制効果,遅延効果を示した。その効果は投与細胞数が多い方が高く,投与時期を遅らせると効果は減少した。またX線照射細胞よりは生細胞の方が,癌から離れた部位よりは癌局所に投与した方が効果が強かった。(2)IFN-γ遺伝子導入癌細胞MethA(Kγ)投与マウスの脾臓細胞から樹立したCTLはCD8陽性,H2-D^b拘束性で,Meth A(Kγ)特異的に細胞障害活性を示し,細胞の酸抽出物中に標的抗原ペプチドの存在を確認した。(3)INF-γ遺伝子導入による癌治療法をより容易にすることをめざして,皮下移植した膀胱癌MBT-2を標的として,IFN-γ高発現プラスミド(SRαMuγ)をカチオン性リポソーム(リポフェクチン)と混合してin vivo癌組織内へ直接注入し,RT-PCRによりmRNAの発現を認めた。(4)本実験の過程でMBT-2のほか複数の皮下移植癌にinvitroの培養系では認められないIFN-βの産生を見いだした。今後は,引き続きIFN-γ遺伝子導入癌細胞の抗腫瘍効果を臨床治療モデルで検討し,臨床応用へ向けての基礎データとしたい。また,Meth A(Kγ)特異的CTLの標的分子を同定し,IFN-γ遺伝子導入癌細胞による抗腫瘍免疫の増強機構を解明していきたい。さらにIFN-γ遺伝子治療をより容易にすることを目標に,ベクターの検討,投与法の検討などを含め,引き続きIFN-γ遺伝子の効果的なin vivo導入法を検討していきたい。また,いくつかの皮下移植癌で認められたIFN-βの真の産生細胞を確定し,その生物学的意義を追求していきたい。
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