研究概要 |
[研究目的]ATLの発症に至る長い潜伏期間では、HTLV-I感染細胞に対するCTLが作動しATLの発症を抑制していることが示唆されている。このHTLV-I特異的CTLをin vitroで増殖させ輸注する免疫療法はATLの治療に有望と思われる。本研究では、ATL患者に好発するHLA型を選び、これに対応したHTLV-I特異的CTLを誘導する抗原細胞パネルとCTLのバンクシステムの確立をめざす。 [結果と考察]ATL患者とHTLV-Iキャリアの同意を得たリンパ球を長期培養し、30株のHTLV-I感染細胞を樹立した。健常人からは、MT-2細胞との混合培養で10株のHTLV-I感染細胞を樹立した。株化T細胞のHLAは、血清学型とDNA型で決定された。HLA適合のATLとキャリアのリンパ球を用いて、株化感染細胞とサイトカイン存在下で培養し、HTLV-I特異的CTLを10株を樹立した。CTLは、HTLV-Ienv,gag,p21x,p27rex,p40taxの他、HTLV-I感染によって誘導される腫瘍関連抗原を認識するCTLであり、HLA-A24,B54,DRB1^*1502,DRB1^*0405,DPB1^*0501で拘束されていた。腫瘍関連抗原は、ATL細胞にも表出されておりanaplastic large cell leukemia抗原と類するものであった。 HLAが異なるHTLV-I感染細胞を30株樹立し、ATL特異的CTLを患者のHLAに適合させて調製するシステムが確立された。今後、このATL特異的CTLを患者に輸注し治療するための諸条件をex vivoの実験系で検討し、CTL免疫療法の安全性を検討する。
|