研究概要 |
1)原発性脳腫瘍の患者(n=7,astrocytoma II,anaplastic astrocytoma III,glioblastoma IV)において術前に〔^<11>C〕diacylglycerol(C-11 DAG)probeを用いたポジトロンCT検査を行った。その結果,悪性群において顕著なPI代謝回転の亢進が認められた。悪性群で正常脳皮質に比べ、PI代謝回転の亢進は、T/N比で1.5〜2.2であった。T/Nが1.5以下であれば腫瘍の増殖速度は軽度であることが明らかになった。 一方、培養腫瘍細胞(C6-glioma)に〔^<11>C〕diacylglycerolを投与し、増殖抑制因子(-)-3D-3-deoxy-3-fluoro-myo-inositol(3-dFI)を用いてPI turnoverへのDAGの再利用を調べたところ、増殖が抑制されるとともにDAGの再利用が抑制された(Cancer Res.,55,4225-4229,1995)。本結果はDAGが増殖シグナルのprobeになり得ることを示したものである。 2)悪性脳腫瘍に対する高LET治療である中性子捕捉療法を行った一症例において10ケ月後脳浮腫を呈したために治療後の評価として^<18>F-FDGによるglucose代謝と^<11>C-DAGによる増殖シグナルの測定を行った。^<18>F-FDGでは陰性画像のために晩期反応によるradiation injuryと考えた。一方、同時に行った^<11>C-DAGによる増殖シグナルでは陽性画像を呈した。その後、患者の経過を追ったところ腫瘍のaccelerated repopulationと思われる急激な腫瘍体積の増加、浸潤を認めるに至り再発と診断した。 以上、本研究によってポジトロンCTにより腫瘍組織の増殖シグナルに関連する画像を捉えることが可能になった。これは生体での腫瘍シグナル伝達活性をとらえた初めての成果である。
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