研究概要 |
グラム陽性菌のTet K,Tet L、グラム陰性細菌のTet B,Tet Cを大腸菌での発現プラスミドにクローニングし、Tet蛋白がNa^+/H^+アンチポーター機能を有するかどうかを、Na^+/H^+アンチポーター欠損大腸菌(RS11株)を用いて詳細に検討した。RS11株はNa^+/H^+アンチポート系を欠損しているために、培地にNa^+イオンが存在すると生育が大きく阻害さえる。Tet蛋白がNa^+/H^+アンチポーターとして機能するならば、これらのプラスミドを導入することによってNa^+イオン存在下でRS11株にの生育が可能になると予想される。ところが、いずれのプラスミドを導入した場合にも、RS11株のNa^+イオン存在下での生育育成はpH7.0,pH8.0両方の条件で全く認められなかった。次に、これらのプラスミドを導入した。RS11株から反転膜を調製調整し、Na^+/H^+アンチポート能をキナクリン蛍光法により測定したが全く認められなかった。Na^+/H^+アンチポーターを有する野性型大腸菌から調製した反転膜では、同じ条件でキナクリン蛍光の大きな変化が観察された。従って、Tet B,C,K,LはいずれもNa^+/H^+アンチポート活性を持たないものと結論される。 次に、二次生能動輸送体のプロトン輸送機能に関係するとされているヒスチジン残基の役割を研究した。Tet Bは5個のHis残基を持っているが、推定膜貫通領域に存在するのはHis257のみである。これらのHis残基を一つずつAlaに置換したところ、テトラサイクリン能動輸送活性を消失するのはH257A変異体だけであった。また、His257以外の4個のHis残基をすべてAlaに置換した変異体は野性型の70%以上の輸送活性を保持していた。したがって、油送機能に重要なHis残基はHis257のみであることがわかった。ところが、His257->Tyr変異体は野性型の約30%の油送活性を示したので、イミダゾール環が活性に必須というわけではない。このことは、少なくともプロトンリレー機構によるH^+輸送を否定するものと思われる。しかし、H257Y変異体はHis特異的修飾試薬であるDEPCに対して低抗性になっていたので、Tet BのDEPC感受性はHis257の修飾によるものであることが証明された。
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