研究概要 |
細胞膜上での、チャネルやトランスポータの機能的クロストークを解明するには、これらの膜タンパク質の局在化と分布、及びそのメカニズムを知ることが大切である。しかるに、細胞膜上でのチャネルとトランスポータの局在化(あるいは分布)の制御機構の解明はほとんど進んでいない。我々は最近、膜タンパク質の局在化の制御に、膜骨格が重要な働きをする例を幾つも見いだした。 筋細胞の膜骨格タンパク質として重要なものは、ジストロフィンとユトロフィンである。それらの分布は相補的で、ジストロフィンは細胞膜自由表面にあり、ユトロフィンは神経・筋接合部にある。したがって、アセチルコリン受容体(AChR)はユトロフィンと、Na^+,K^+-ATPaseはジストロフィンとなんらかの相互作用をすると考えられている。一方、AChRの細胞膜上での接合部への移動においては、ジストロフィンのフェンス効果とそれへの結合、ユトロフィンとの結合の開始が鍵になる段階である。Na^+,K^+-ATPaseについては、ジストロフィンとの相互作用様式(フェンス効果と結合)が重要である。 本年度は金コロイドをNa^+,K^+-ATPaseに結合させて、細胞の自由表面上のそれらの運動を一分子レベルで観察した。また、光ピンセットによる牽引に対する応答を調べた。自由表面での運動を調べているのは、これらのタンパク質の局在化の機構を調べたいからである。Na^+,K^+-ATPaseの約20%が何らかの細胞骨格/膜骨格に結合していることが示された。複雑なのはこれらの骨格系も柔軟で運動をしていることで、しかも弾性的な性質を示した。実効バネ定数は、0.8pN/μm程度であった。
|