研究概要 |
今年度は、植物液胞膜水チャネルおよび液胞膜H^+-ピロホスファターゼ(H^+-PPase)に焦点をあてた。我々の観察では植物液胞膜には多量の水チャネル類似分子が複数種含まれている。そこで、個々の一次構造を解析し、水チャネルとしての機能を確認すると同時に、発現の量と器官特異性について研究することとした。また、単純構造のエネルギー変換酵素であるH^+-PPaseについては、ヤエナリ酵素の一次構造を決定し、推定される機能ドメインの検討を行った。以下、2つの分子について個別に今年度の成果を述べる。 (1)植物液胞膜の水チャネル.液胞膜には23kDaの膜タンパク質(VM23)が複数種存在し、膜タンパク質量の30%を占める。今回ダイコンのVM23のcDNAをクローニングした。複数のクローンのうち、N端アミノ酸配列がVM23と一致するcDNAの塩基配列を決定し、一次構造を推定した。これは253個のアミノ酸で構成され、6つの膜貫通領域が認められた。アラビドプシスの液胞膜水チャネルの配列と90%が一致し、MIPファミリーに共通なNPA配列も存在する。VM23へのDCCDの結合部位と考えられるGlu残基もある。しかし水チャネルの水銀感受性を決定するCys-189に相当するCys残基は存在しない。 (2)液胞膜H^+-PPase:植物の液胞膜には単純な構造をもつH^+-PPaseがH^+-ATPaseと共在する。ヤエナリH^+-PPaseのcDNAクローニングにより、766個のアミノ酸で構成され(分子量80,002)、13の膜貫通領域をもつこと、N端側にGluクラスターが存在し、H^+輸送阻害剤DCCDの結合部位、そして基質結合部位と考えられるドメインが確認された。基質結合部位、C末端領域に対する特異的なペプチド抗体は、基質加水分解、PPi依存性H^+輸送のいずれも阻害し、これらの機能上の重要性が確認できた。
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