研究概要 |
本研究はテトラサイクリン/プロトンアンチポ-タ(TetAタンパク質)の結晶化を行い,X線結晶構造解析によって三次元構造を決定し,その立体構造に基づいて細胞膜輸送の分子機構を原紙レベルで解明しようとするものである。 これまで最もテトラサイクリン耐性の強いグラム陰性菌のTetAタンパク質(分子量42kDa,アミノ酸残基数401)を対象としてその結晶化条件の検索を行った.TetAタンパク質はトランスポゾンTn10のTetA遺伝子を大腸菌内で大量発現させたものを用いた.最初にTetAタンパク質の結晶化を行うための沈殿剤の検索を行ったところ,エタノールとポリエチレングリコール(PEG)が結晶化の可能性をもつことが分かった.これらの沈殿剤を用い,pH2.5からpH11.0までの数多くの緩衝液,添加剤,界面活性剤を組み合わせて結晶化条件を検索し,沈殿剤としてPEG8000,添加剤として酢酸カルシウム,界面活性剤としてドデシルマルトシドを用い,pH6.5で結晶化を行ったときに結晶が得られた.この結晶は四角両錐型をしており,その1辺の長さが約0.07mmである.X線回折実験を行うのに適当なさらに大きい結晶を得るため,結晶化条件を検討を継続している. 膜タンパク質の結晶化においては,その親水性の分子表面の大きさの調整が結晶化の成否に重要である.最近の細菌型チトクロムc酸化酵素の例でも,抗体を結合させてタンパク質の親水的分子表面の割合を増やすことで結晶化を成功に導いている.このような視点から,我々はデヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をTetAタンパク質のN末端に融合させたタンパク質の結晶化も並行して試みた.この融合タンパク質の沈殿剤の検索を行ったところ,エタノール,PEGに加えて数種類の塩が結晶化の可能性を与えることがわかった.TetAタンパク質と同じように数多くの結晶化条件の検索を行ったところ,沈殿剤として酢酸ナトリウム,添加剤として塩化ナトリウム,界面活性剤としてドデシルマルトシドを用い,pH7.5で結晶化を行ったときに微結晶が得られた.この結晶は長さが0.05mmにも満たず、X線回折実験にはまだ十分な大きさでないため,結晶化条件の改良を行っている.
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