研究概要 |
本研究ではHIVプロウイルスの転写制御に関与する転写因子HIV-EP,NF-kBの阻害剤の開発、転写因子MybのDNA結合ドメインの詳細な構造解析及び全長Mybの結晶構造解析のための試料調製を行った。 昨年度はHIV-EPの阻害剤として有効な金属キレート剤を開発したが、本年度はより広範な合成金属キレート剤の効果を調べ、HIV-EPおよびNF-kBの各々の活性を選択的に効率良く阻害するものを得た。今後これらの阻害剤を用いて2種類のHIVエンハンサー結合蛋白質の機能解明が進むことが期待される。 昨年度はMybのDNA結合ドメインとDNAの複合体の立体構造をNMRにより決定したが、本年度はより詳細に構造の揺らぎについて解析した。その結果、局所的な構造の揺らぎの存在が見い出され、特異的なシステイン残基を介した酸化・還元による制御の可能性が強く示唆された。したがって今後、DNA結合ドメイン内の特異的システイン残基の酸化・還元反応を標的として阻害剤の開発を進めることが可能である。 HIV転写制御因子の立体構造の決定はHIV阻害剤の開発のための重要な基盤となる。全長Myb蛋白質の結晶構造解析のための試料調製を行った。我々が新たに開発したチオレドキシンを共発現させる大腸菌発現系を用いて、1リットル培養液から約2mgの完全精製蛋白質を得る系を作製できた。今後この系を用いて構造の解明が進み、より多様な阻害剤の開発が可能になることが期待される。
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