研究概要 |
成熟動物でみられるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGPP)の側枝形成調節効果が運動神経・筋結合形成期にも発揮されるかを検討した。下肢節非動化の目的で鶏胚期5から10日目まで連日curareを投与後,下肢のiliofibularis筋を摘出しslowregionのnasintrunkの側枝数を計測した。その結果、curare投与群のtrunk1mmあたりの側枝数は、saline投与群に比べ、平均2.3倍の増加を示し、curare投与による節非動化は筋神経の側枝数を増加させると結論された。次に,このcurareによる側枝数増加がCGPPによって変化するかを検討する目的で同様の条件下でCGPPを投与した。その結果,curare+CGPP投与群の側枝数は、curare単独投与郡に比べ有意に減少した。CGPP単独投与郡はSaline投与郡と差はなかった。この結果は、発生段階に相違が生じたためでもCGPP投与により節非動化が解除されためめでもなかった。従って、CGPPはcurareによる節非動化で誘導される側枝増加を抑制すると結論された。運動神経細胞の自然死は,神経筋結合形成期に一致しておきる。この自然細胞死が側枝数に規定されるという仮説(access仮説)がある。もしこの仮説が正しければ、CGPPによる側枝数減少に伴って生存数が減少するはずである。この可能性を検討する目的で上記条件下の胚の脊髄を単離し、腰随運動神経細胞体数を計測した。saline投与群では平均14013個の運動神経細胞体が観察され,curare投与胚では,23043であた。ところが、curare+CGPP投与胚では平均22825とcurare単独投与と差は見られなかった。またCGPP単独投与では14380でsaline投与群と差は無かった。従って、CGPPはcurareによる筋非動化で誘導される筋神経の側枝形成を抑制するが、curareによる自然細胞死阻止効果を抑制しないと結論される。curareによる筋非動化によって筋は生存因子と側枝形成因子が誘導するが、それらは異なる分子であり、CGPPはこのうち側枝形成因子誘導のみを阻止すると推測された。
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