研究概要 |
生後10日のSDラット脳から、膜結合性プロテオグリカンを部分精製し、それを免疫原としてモノクローナル抗体(MAb)を作製した。4種類のMAb(C1,C3,C5,c10,いずれもIgG1)が、120kDaのコア糖蛋白を持つコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)を認識した。免疫組織化学により、このCSPGは主に発達期の脳の神経細胞の表面に局在すること、および、、Western blot分析により、ラット大脳では出生前後から生後20日にかけて増加するが、成熟脳ではピーク時の半分に減少していることがわかった。本年度は、このCSPGのコア蛋白cDNAのクローニングを完成し、次の結果を得た。 1.全長544個のアミノ酸からなる蛋白をコードするcDNAをクローニングした。この蛋白は、30アミノ酸残基からなるシグナルペプチドと、1個の膜貫通領域を持つ。このプロテオグリカンは、既報のどのプロテオグリカンファミリーにも属さない全く新しい分子種であることがわかった。そこで、Neuroglycan C(NGC; Neuron-specific proteoglycan with chondroitin sulfate)と命名した。 2.成熟蛋白は、N末端側より、(1)コンドロイチン硫酸が共有結合している領域、(2)塩基性アミノ酸のクラスター、(3)全システイン残基を含む領域、(4)膜貫通領域、(5)リン酸化されうる配列を持つ細胞内領域の、構造的に異なる5つの領域から構成されていた。 3.Northern blot解析により、ラット脳に於いて、3.1kbのサイズのバンドが一本だけ検出された。他の組織からは、NGC mRNAが検出されなかったことから、NGCは、中枢神経系に特異性の高いプロテオグリカンであることが明らかとなった。
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