研究概要 |
1.安定同位体標識試料の調製 抗ダンシルモノクローナル抗体のV_H,V_Lの2個のドメインから構成される最小抗原認識単位F_Vフラグメント、V_H,V_LおよびC_Lドメインから構成されるFab^*フラグメント、およびV_H,V_L、C_H1,およびC_Lから構成されるFabフラグメントを測定対象として取り上げ、アミノ酸選択的に安定同位体標識した。 2.ピコ、ナノ秒オーダーのダイナミックスの解析 主鎖アミド窒素^<15>N標識抗原認識フラグメントの^<15>N緩和時間を測定した。得られた結果より、抗原結合フラグメントF_VのV_H,V_Lドメインのピコ、ナノ秒オーダーにおけるダイナミックスに変化がないことが示された。 3.ミリ秒オーダーのダイナミックスの解析 ^<15>N標識された抗原認識フラグメントを用いて、主鎖アミド窒素のT_1ρ緩和時間を測定した。T_1ρ緩和時間は、ミリ秒オーダーのゆっくりした主鎖のコンフォメーション平衡に対して敏感なため、抗原認識フラグメントにおけるミリ秒オーダーのダイナミックスが検出できる。その結果、抗原認識部位にミリ秒オーダーのダイナミックスが存在していることが示された。さらに、主鎖アミド水素のH-D交換速度を^<15>N標識抗原認識フラグメントを用いて測定した。得られた交換速度のpH依存性を解析することより、V_H,V_LドメインにおけるH-D交換過程は両ドメインで同じ高次構造を取っているにも拘わらず、大きく異なることが示された。
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