研究概要 |
シャペロニンに結合できる折れたたみ中間体とはどんなものなのであろうか?その結合の熱力学的な性格を調べるために,滴定型熱量計で,結合にともなう熱の出入り(ΔH)を温度を変えて測定した。シャペロニンとしては,大腸菌のGroEL,折れたたみ中間体のモデル(基質タンパク質)として還元α-ラクトアルブミンとペプシン(中性pH)を用いた。実験してみると,意外なことに,還元α-ラクトアルブミンと中性ペプシンでは,シャペロニンに対する結合のようすが相当違うという結果がでた。まず,塩依存性が違う。シャペロニンと還元α-ラクトアルブミンの結合は,塩があっても無くても(±0.2MKCl)解離定数(Kd)はあまり変化しなかった。しかし,中性ペプシンは塩存在下でのみシャペロニンと結合した。その解離定数(Kd)は,還元α-ラクトアルブミンとシャペロニンの結合と同じような値であった。塩がない条件では結合しないらしい(ΔH〜0)。また,ΔHの温度依存性をみると,シャペロニンと還元α-ラクトアルブミンの場合は,負の依存性があった。これは両者の結合に疎水的相互作用が大きな役割を果していることを示唆する。しかし,シャペロニンと中性ペプシンの結合にともなうΔHは温度依存性がほとんど無かった。疎水的相互作用の貢献は少ないものと思われる。結局,シャペロニンと基質タンパク質の相互作用はそれぞれの基質タンパク質ごとに異なる,という可能性を考える必要がでてきた。 また、私たちはシャペロニンと基質タンパク質の相互作用を、表面プラズモン共鳴でも調べた。還元α-ラクトアルブミンを固体チップに固定して,これに対するシャペロニンの結合をリアルタイムで測定した。これから求めた解離定数(Kd)は,上記の熱測定から求めたものより三桁も低かった。 この相違は、還元α-ラクトアルブミンを固定したことによる影響と考え、追究している。
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