研究概要 |
ニンジンの懸濁培養細胞からステンレス篩による濾過と密度勾配遠心による分画によってembryogenicな細胞塊を得た。これを2,4-Dを含まない培地で培養し不定胚形成を誘導した場合と、2,4-Dを含む培地で培養し不定胚形成を阻害して未分化的な増殖を行わせた場合のそれぞれの細胞から可溶蛋白質を抽出した。抽出した蛋白質はSDS-ポリアクリルアミド電気泳動で分離しニトロセルロースメンブレンにブロッティングした。ブロッティングしたタンパク質に対してビオチン標識したカルモジュリンをプローブとして用い、アルカリフォスファターゼ標識したストレプトアヴィジンを介してカルモジュリン結合蛋白質の検出を試みた。 ビオチン標識したプローブを用いた実験では、ストレプトアヴィジンによってビオチンを含むタンパク質が非特異的に反応することがあるため、未標識のアヴィジンとビオチンによるブロッキングを行う必要があった。カルモジュリンと結合タンパク質との反応はカルシウム依存性であるるが、この実験でも反応液中にカルシウムの選択的キレーターであるEGTAを加えると反応は見られなかった。 実験の結果、不定胚形成を誘導した場合と、2,4-Dを含む培地で未分化的な増殖を行っている細胞とでは、標識したカルモジュリンと結合する蛋白質に変動が見られた。不定胚形成を行っている細胞では2,4-D存在下で未分化的増殖を行っている細胞にくらべカルモジュリン結合タンパク質が量的に少なかったが、特に球状胚が形成される直前の細胞塊ではそれらの量が非常に少なくなり、ほぼ完全に消失してしまうタンパク質も見られた。
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