研究概要 |
すでに単離されている減数第一分裂前期特異的 遺伝子の機能を解析することから減数分裂誘導と決定機構を明らかにする目的で以下の成果を得た。 1。ユリ花粉母細胞で組み換えに働くと推定される遺伝子、Lim15の相同遺伝子が、イネ、トウモロコシ、シロイヌナズナ、タバコ、小麦にも存在することを明らかにした。この遺伝子はこれらの植物でも体細胞では発現せず、減数分裂中にだけ発現する。Lim15遺伝子産物の抗体を作成しLIM15蛋白質が対合した相同染色体上にRAD52様蛋白とともに局在することを示し、同様のことをマウス、ヒトの場合にも証明し、普遍的に「最終的Point of no returnはPachytene期にLIM15蛋白質によって、他の幾つかの蛋白分子とRNAの共存下で、決定される」ことを結論し、その分子機構の解析に進むこととした。 2。減数分裂に入る最初の過程で特異的なRNaseとプロテアーゼが誘導される。ユリ花粉母細胞でもセリンプロテアーゼをコードしていると考えられる遺伝子Lim9の発現を証明した。LIM9蛋白質を大腸菌に生産させ抗体を作成し、ユリの減数分裂におけるLIM9の出現と変動を測定すると、Lim9の転写と連動してzygotene 期に75kDaの蛋白質として出現し、第一分裂期間中存在する。しかしpachytene期以後には75kDaの他に78kDaの蛋白分子も出現する。この二つが分子の違いに依るものか、翻訳後修飾に依るものかを明らかにし、減数分裂決定へ如何に作用するのかを解析中である。 3。分子遺伝的解析が可能な酵母のゲノムに相同遺伝子を探索し、現在までに、Lim4,5,8,13,16,17は出芽酵母に、Lim13,17は分裂酵母に相同的遺伝子の存在を確認した。Lim4,5,6,13は遺伝子産物のN-末端に疎水性アミノ酸領域をもつため、減数分列細胞外からの移動、細胞内小器官からの分泌、輸送を経た後に機能することも考えるに至った。
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