研究概要 |
1.研究目的:出芽酵母の核マトリックス蛋白Nps1pは分子量約160KのG2/M期の進行に必須な蛋白である。本蛋白は、中央部分にヌクレオソームのリモデリングに働くことが明らかにされたSnf2pと相同性の高い領域を、C末部分に、DNA結合能を示す領域を持つ。細胞周期のG2/M期には、染色体の大きな高次構造変化が起こると考えられ、我々は、本蛋白が、染色体の特定部位でのヌクレオソームのリモデリング、あるいはその他の核蛋白との相互作用を通じて、この過程に働いていると予想している。本研究は、Nps1pの機能解析、Nps1pと相互作用する核蛋白の同定と機能解析、ならびにこれら蛋白の核内局材部位の視覚化とその細胞周期における動態を解析する事により、核構造と染色体間の機能的関連を理解するための手がかりを得る事を目的とする。2.研究成果:Nps1pと相互作用する核蛋白の同定のため、本蛋白の多量発現に依存して生育阻害を受ける変異株を分離し、これを相補する遺伝子をクローニングした。解析の結果、この遺伝子NPS2は分子量約180Kの核蛋白をコードし、本遺伝子の破壊株は温度感受性、UV,MMS,hydozyurea感受性、胞子形成不能等、多様な形質を示すことを見いだした。特に、破壊株は減数分裂過程において、2回の核分裂の後、核領域の分散が起こって死滅する事から、Nps2pも核の高次構造維持に働くと予測された。Nps1pとNps2pの相互作用をしらべるため、two hybridsystemにより解析を行った結果、両蛋白間には直接の相互作用はないが、Nps1pは何らの転写因子と結合し得る事、この結合をNps2pが細胞周期依存的に調節している事を示すデータが得られた。以上の結果より、Nps1pはDNAや転写因子との結合、Nps2pは核構造の維持によって核機能の発現に働いていると考えられる。現在、これら2つの蛋白の、細胞周期および減数分裂過程における核内局在部位の変動の解析と、Nps1pと結合する転写因子のクローニングを行っている。
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