研究概要 |
上記研究課題について,当初の研究計画をほぼ完了したので報告する. 1.ヒトデの卵成熟において,1-メチルアデニン刺激からMPFの活性化に至る過程に卵母細胞プロテアソームが関与すると提唱されているが,その詳細は不明である.今回我々は,プロテアソームに特異的なインヒビター(MG115)が,卵成熟を阻害することを見出し,Pre-MPFの活性化に確かにプロテアソームが関与するという更なる証拠を得た.しかし,メチルユビキチンが卵成熟を阻害しないことや,卵成熟を強く阻害するZ-Phe-Ser-Arg-Hは有糸分裂を阻害しなiことなどから,卵成熟過程においては,プロテアソームは26S型とは異なる分子種として機能している可能性が考えられた.そこで次に,ホルモン刺激により誘起されるプロテアソームの分子種の動態を解析した.その結果,未成熟卵母細胞には,1500Kと650Kの少なくとも2種類のプロテアソームの分子種が存在し,前者は,ホルモン刺激により一時的に活性が低下した後に再活性化されてから低下するという動態をとることが判った.また,この1500Kプロテアソームは,抗プロテアソーム抗体や抗制御サブユニット抗体により免疫沈降されるが,制御サブユニットをすべて含んでいるわけではなく,26Sプロテアソームとは異なる新規の分子状態をとっていることが示された.さらに,プロテアソームは,卵核胞崩壊時期になってはじめて全ての制御サブユニットの分子集合が完了することも示唆された. 2.生理的基質の探索を行ったところ,Gsα蛋白質の分解が,Z-Phe-Ser-Arg-Hによって阻害されることから,ホルモン刺激によりGi蛋白質から遊離するβγサブユニットの生理機能を抑制するGsαサブユニットがプロテアソームによって分解されることによって,βγサブユニットの生理作用が増強されることが示唆された.
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