生殖細胞のような不死化細胞において、このような通常のDNA合成機構のみでは染色体DNA末端が短小化することに拮抗する機構として、現在多くの支持を集めているのがテトラヒメナにおいて初めて同定されたテロメレースである。テロメレースはテロメアDNAを構成する単純繰り返し配列をその末端に新規に合成付加する作用を持ち、内在するRNAを鋳型とする一種の逆転写酵素と考えられている。しかし、現在、生殖細胞特異的にテロメレースが発現している分子機構はもちろんのこと、生殖細胞系列がmitosisとmeiosisを繰り返して維持されているどの段階の細胞において活性があるのかすら不明なままであるのが現状である。そこで、本研究においては、ヒトテロメレースの検出系の開発と酵素の精製を試み、以下の様な結果を得た。 ヒトテロメレースは、きわめて微量にしか存在しないために、その生化学的な研究のためには高感度かつ定量性に富むテロメレースの検出系の開発が不可欠であった。我々は、テロメレースの産物であるテロメア繰り返し配列をPCRを用いて高感度に検出することで、高感度かつ定量性よくテロメレース活性を測定する系(Stretch PCR assay)の開発に成功した。この系を用いて、これまで純化精製の報告のないヒトテロメレースの精製を試み、テロメレースの蛋白質成分と思われる数種類の蛋白質を同定した。現在、この蛋白質の構造解析を行っている。今後、この蛋白質をコードしている遺伝子をクローニングすることにより、テロメレースが生殖細胞では、活性が強く、体細胞では低い分子機構の解明を進めたい。
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