研究概要 |
日本語版マギル疼痛質問票(Japanese McGill Pain Questionnaire(JMPQ))を用いて,各種歯科疾患における疼痛表現調査を実施した. 対象疾患は歯髄炎と根尖性歯周炎群43例,抜歯後疼痛群15例,顎関節症群192例,炎症群59例,扁平苔癬群16例,神経痛群62例,義歯性疼痛群155例,悪性腫瘍群13例,非定型顔面痛群67例,さらに本質問票掲載表現がみられることから三叉神経麻痺群20例を追加した計642例である。 疾患別疼痛表現選択数では,全体として非定型顔面痛群が最も多く,義歯性疼痛群が最も少なかった。 表現グループを構成する各表現に与えられた強度得点による多重比較では,歯髄炎と歯周炎群および神経痛群の得点が高く,ついで非定型顔面痛群であり,他の疾患群の得点は低かった。 疾患に特異的な表現を明らかにするため,それぞれの疾患の全患者のうちの20%以上に選択された表現をとりあげた.同時に各表現選択の有無を二値独立変数としてその疾患罹患の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を実施して各疾患毎に相対危険度が大きい表現用語を抽出した.その結果相対危険度が大きく,かつ20%以上の患者に選択された表現として,歯髄炎と歯周炎群では「うずくような」が,抜歯後疼痛群では「ジーンと感じる」が,炎症群では「うずくような」が,神経痛群では「ビーンと痛みが走る」「針で突くような」が悪性腫瘍群では「さわられるといたい」が,非定型顔面痛群では「ひどく不快な」が,三叉神経麻痺群では「しびれたような」「ぴりぴり」「ジーンと感じる」が特異表現として抽出された.しかし顎関節症群および扁平苔癬群,義歯性疼痛群では20%以上の患者に選択されると同時に相対危険度も大きい表現はみられなかった.
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