研究概要 |
研究で得られた成果は次の3点に要約される. (1)島弧リソスフェア性マントルに由来する玄武岩のZr/Y比は35Ma以降時間とともに減少するのに対して、Ti/Zr比は増加傾向を示す。また,各時代の玄武岩の中で最も低いZr/Y比を有する玄武岩を2Nb-Zr/4-Y図で検討したところ,島弧リソスフェア性マントルマントルは35Maから第四紀に向かって,NbとZrに富む側からこれらに乏しくなる側にほぼ直線的に変化することが明らかとなった.これらの事実に基づき、島弧リソスフェア性マントルは、漸新世以降、HFS元素にエンリッチしたOIBソース的なものからN-MORBソース的なものを経て現在のHFS元素に枯渇したソースに変化してきたことを議論した。このような,島弧リソスフェア性マントルにおけるHFS元素比の経年変化は,マントルからの玄武岩質マグマの継続的な生成によって生じたものと考えられる. (2)一方,アセノスフェア性マントルに由来する玄武岩のこれらの比は上記玄武岩とは異なる変化パターンを示す。しかし,これらの玄武岩のデータが不足しているので,アセノスフェア性マントルのHFS元素の経年変化の詳細は今後の研究の蓄積によって明らかになるであろう. (3) Y/Nb-Zr/Nb関係において,北海道北部の第三紀玄武岩(9〜14Ma)は,千島弧や上記の東北日本の同時代の玄武岩よりもさらにエンリッチした性質をもっていることが明らかになった.このことは北海道北部の第三紀玄武岩の起源マントルが,東北日本のマントルとは組成が異なることを示唆している.
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