研究概要 |
本研究の主要な成果は、,以下の3点に要約できる。 第1には,コンカレント・エンジニアリングの実現を図るため,建築生産プロセスの構造を論理的に記述する方法の提示を行った。まず,現状プロセスの構造化を行い,従来の直列型モデルの限界を指摘し,解決方法を考察した。次に,その方法によって新たなプロセスモデルを開発し,標準的なプロジェクトにおける記述例を示した。最後に得られたモデルの有効性と位置づけについて,コンカレント・エンジニアリングの目的と手段を整理し,それらをモデルの要素と対応づけて検討した。その結果,カテゴリー分割,記述子,カテゴリーの重ね合わせにより,担当業務プロセスの構造や他の業務との関係を明示的に表現できることを示した。 第2には,同時進行型建築生産プロセス上の個々の業務を対象に,これを整合的に実施するための支援ツールの提示を行った。まず,業務実施方法をフローにモデル化し,概要を述べた。次に,フローの項目の支援方法を考察し,支援ツールの要件を検討した。さらに,その中心となるプロセスモデルの基本構造を述べた。最後に,オブジェクト指向言語を用いたプロトタイプ開発例を示した。以上より,一般的なフローからのマネジメント項目と内容を網羅的な明示,支援ツールの構成およびプロセスモデルの仕様の提示,プロトタイプ開発によりプロセスモデルの実現可能性の提示を行った。 第3には,設計情報モデルの検討を行った。設計情報モデルとは,担当主体の協調的な業務実施を支援するために各業務の入出力情報を統合的に管理蓄積し,整合性を確保するものである。まず,業務実施支援ツールの構成と設計情報モデルの位置づけを検討した。次に,設計情報のオブジェクト指向分析により,設計情報モデルの構成を確定した。さらに,オブジェクト指向データベースによる設計情報モデルの設計・実装を行い,最後にプロトタイプ開発例を示した。
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