研究概要 |
水貯留コンクリート構造物には,上水用,下水用,農業用などの種類がある。これらの構造物の耐久性は,力学的には地震時の挙動と各種のひびわれ発生により規定される。一方,水貯留コンクリート構造物の耐久性に関して,アルカリ骨材反応,塩害,中性化(炭酸化),微生物腐食などコンクリートの化学的劣化が問題になる場合がある。これらの劣化原因は水中やコンクリート中に含まれる各種のイオンであり,その防止策はイオンの侵入を遮断することと,侵入したイオンを吸着・除去することである。 科学研究費の助成による研究成果として,主に下水道構造物を中心とした微生物による硫酸劣化と複合炭酸劣化に関して,その劣化機構を解明し,補修に関わる劣化の指標を提案した。加えて,塩害に寄与するClイオンなどの陰イオンと,アルカリ骨材反応を引き起こすNa,Kなどの陽イオンを吸着する補修時における断面修復材の着想に至った。 一般に,これらの構造物の補修は,劣化コンクリートの除去と断面修復,及び表面の有機質被覆よりなる。よって,劣化深さの決定と劣化部の除去法は重要な研究テーマであり,今回,幾つかの化学的劣化指標と超高圧水洗処理を提案したことで研究の前半を終えた。しかし,補修時において,劣化部を完全に除去することは,その経済性から不可能である。よって,今後,残存したイオンの安定化を図るための断面修復材の開発が希求される。表面の有機質被覆を有効に機能させるためにも,この断面修復材と一体化して研究を実施する必要がある。また,水貯留コンクリート構造物には土中埋設のものが多くあり,この場合は必ず併用しなければ補修の効果がない。次なる研究課題はここにある。
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