配分額 *注記 |
36,800千円 (直接経費: 36,800千円)
1997年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1996年度: 15,500千円 (直接経費: 15,500千円)
1995年度: 16,300千円 (直接経費: 16,300千円)
|
研究概要 |
心筋細胞や血管内皮で産生されるエンドセリン(ET)-1は血管収縮作用を有すると伴に,心筋に対して細胞障害作用や肥大作用を有する.本研究にて,慢性心不全(CHF)と心肥大における内因性ET-1の病態生理的役割を検討し,ET拮抗薬の治療薬としての可能性も検討した.【方法・結果】ラットの左冠動脈を結紮して心筋梗塞を作成した(CHF群).偽手術群には開胸手術のみを行った.手術3週後の検討にて,左室(LV)+dp/dt maxの低下・左室拡張終期圧(LVEDP)および中心静脈圧の上昇がCHF群にみられ,ラットは心不全になっていた.この時期,左室でのET-1 mRNA発現は,偽手術群よりCHF群にて著明に亢進しており,LVの組織ET-1レベル(ペプチドレベル)もCHF群で著明に増加していた.CHF群にETA受容体拮抗薬であるBQ123([CHF+BQ123]群)または生食(Vehicle)([CHF+生食]群)を,偽手術群にも生食を,浸透圧ミニポンプにて12週間投与した.生存率は,[CHF+BQ123]群の方が[CHF+生食]群より著明に高かった(85%vs43%,P<0.01).生存したラットでの検討にて.BQ123の投与はCHF群のLV+dp/dt maxの低下やLVEDPの上昇を改善することが示され,また,病理組織学的検討にて,BQ123の投与はCHF群の心臓リモデリングの進展を抑制することが示された.抗ET-1抗体を用いたET-1の染色性(ET-1様免疫活性)は,CHF群の心筋細胞にて著明に増大していたが,冠動脈内皮細胞では両群間に違いはなかった.またこの病時期の不全心筋にて,アンジオテンシン変換酵素mRNAの発見は亢進していた.一方,ET変換酵素mRNAの発現は亢進が認められず,ゆえにET産生増大はET前駆体産生増大に起因し,ET変換酵素には依存しないことが示唆された.また,ラットに大動脈縮窄の手術を行い心肥大を作製した.この肥大心にてET-1 mRNAの発現の亢進がみられ,ET拮抗薬は心肥大を抑制した.【結論】CHFラットの心臓においてET-1の産生(mRNAおよびペプチドレベル)は著明に亢進してた.これは,ET前駆体産生増大が主な原因であり,ET変換酵素には依存しない.またETA受容体拮抗薬の長期投与により心不全の改善(生存率の著明な改善や心臓リモデリングの進展の抑制など)が認められた.また,ET拮抗薬の投与は,CHFによる心筋の遺伝子発現(ANP・心筋小胞体Ca ATPase遺伝子など)の変化を改善し,ゆえに心筋細胞に質的な改善をもたらすことが判明した.また,ET拮抗薬は心肥大を抑制した.以上より,内因性ET-1は心不全と心肥大の進展に関与しており,ET拮抗薬が新治療薬になり得る可能性が考えられた.
|