研究概要 |
本研究は,ストレス-コーピング-病気罹患性モデルを理論的枠組みとして,ストレスと病気-健康との間に介在する心理社会生物学的メカニズムを実験的-フィールド研究から実証的に解明することを目指した.平成9年度では,フィールド研究において,大学生を対象にしたストレスと健康関連行動(Cornel Medical Index:CMI,ポジティブ健康行動実行尺度などで評価)を測定するための質問紙の収集と作成を行うとともに,実験的研究において,メンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応性(血圧,脈拍,唾液IgA抗体,唾液MHPG産生含量)を測定するための実験系の確立を図った.平成8年度より平成9年度にかけて,約600名の大学生の中から生活ストレスの得点(ストレッサー体験率とストレス反応の自覚)に応じて選ばれた30名(生活ストレス高群・低群,各群15名)を対象に3-4ヶ月の間隔で,フィールド研究では健康関連行動,実験的研究ではメンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応を繰り返し測定した.その結果,日常生活場面におけるストレス反応の自覚とダイエット行動との間に有意な関係が認められたが,その他の健康関連行動の実行との間には関連性を認めなかった.また,メンタルストレス・テストに対する反応性に関しては,課題間の反応特異性が大きく,個人内におけるストレス反応性の一般性は必ずしも明確ではなかった.健康関連行動とメンタルストレス・テストによるストレス反応性との間にはとくに強い相関はなかった.以上の結果より,生活ストレスが心理生物学的反応性と健康関連行動に及ぼす影響に関しては,今回対象とした大学生を約1.5年間縦断的に追跡検討した限りでは,横断的研究が示唆するような関連性をとくに認めなかった.
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