研究概要 |
中枢神経系に何らかの徴候を有し,言語行動に問題をもつ学習障害児に対しては,中枢性聴覚機能の聴能学的診断が欠かせない.本研究は,高位聴覚系の言語音に対する処理機能を診断するテストバッテリ-を開発し,聴能学的診断に供せんとして計画された.平成7・8年度に続き,平成9年度には「周波数ひずみ語音検査」,「時間ひずみ語音検査」,「両耳融合能検査」,「両耳分離聴検査」,「両耳交互聴検査」,「競合文検査」を中心に各検査語を検討し,学習障害児に実際に検査を実施した. 両耳分離聴検査は,吉野(1981,1985)による2音節単語および4音節単語に修正を加え,「全競合検査」,「部分競合検査」を作成し,感音性難聴および中枢性難聴の疑いのもたれ,「きこえとことばの教室」に通級する小学生に個別的に実施を試みた.両耳交互聴検査は,TY89版の「幼児用3音節単語」から20単語,「日常生活文」から3〜4分節文を13文(内3文は練習課題)選択し,検査文を作成した.日常生活文の両耳交互の構造は,学校は(右耳)/休みに(左耳)/しましょう(右耳)に代表される「右耳-左耳-右耳」構造と電話で(左耳)/タクシーを(右耳)/呼びましょう(左耳)に代表される「左耳-右耳-左耳」構造に分けられた.競合文検査は,4-5歳児が極めて良く理解できる3-4分節分を10文選定した.これらの検査を典型的な学習障害児11名に対して個別的に実施し,それぞれについて分析を行った.
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