研究課題/領域番号 |
07454071
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
固体物性Ⅰ(光物性・半導体・誘電体)
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研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
那須 奎一郎 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (90114595)
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研究分担者 |
富田 憲一 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所・物質科学第一研究系, 助手 (70290848)
岩野 董 (岩野 薫) 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所・物質科学第一研究系, 助手 (10211765)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
1997年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1996年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1995年度: 5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
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キーワード | 内殻励起子 / X線共鳴非線形光学 / 軟X線固体、分光 / X線ラマン / X線ルミネッセンス / 共鳴効果 / 非線形光学 |
研究概要 |
結晶の中で、如何なる電子状態が実現しているかを解明するのが軟X線固体分光学の目的である。特に価電子帯の情報を得る事が最も重要である。この目的の為に、従来から、光電子分光法が汎用されてきた。この方法は、軟X線で、固体内の価電子帯に居る電子を、固体外の真空中に叩き出し、その運動エネルギー分布から、価電子帯の性質を決定するものである。この分光法は、極めて有用な方法であるが、実際に、電子が固体内から表面を経由して真空領域を走り抜け測定器に到達せねばならず、その為に、色々と問題な点も存在する。このような理由から、最近、軟X線ルミネッセンス法が、提案されている。これは、光電子分光の場合と異なり、軟X線の一次光学過程ではなく、共鳴二次光学過程である。先ず、約100eV程度のエネルギーを持つ一次光で、内殻準位から、絶縁体の伝導帯へ電子を励起する。この励起で空になった内殻準位へは、伝導帯に励起された電子のみならず、価電子帯にいる電子も、軟X線を放出すれば遷移できる。従って、この放出光のエネルギー分布を調べれば、価電子帯の性質を決定する事ができ。しかし、簡単な二次光学過程の理論に基づきこの問題を考察すれば、価電子帯にいる全ての電子が等しく、空になった内殻準位へ遷移出来るのではない事が、直に解る。問題を単純にする為、軟X線の運動量を結晶運動量に比較して無視すると、伝導帯電子の運動量、内殻正孔の運動量、価電子帯電子の運動量は、全て運動量保存則から同じになる。更に、内殻正孔のエネルギーはその運動量に依存せず一定であるから、励起光のエネルギーが指定されると、共鳴条件から、上記3個の運動量が同時に定まってしまう。これでは、価電子帯にいる特定の電子のみが二次光を放出できる事になり、価電子帯全体に関する情報を得る事は覚束ない。ところが、幸いにも、固体結晶には、フォノン(格子振動)と呼ばれる擬ボ-ズ粒子が存在する。このフォノンが一回振動するのに要する時間(τ_p)は、軽原子からなる結晶と重原子からなる結晶とでは異なるが、凡そ、τ_p=10^<-14>〜10^<-12>秒、であり、そのエネルギーは軟X線のエネルギーから見て無視できる。しかも、フォノンは電子と同様に、様々な結晶運動量を取る。従って、内殻正孔とフォノン間に相互作用が働けば、内殻正孔は、殆どそのエネルギーを変えずに、運動量のみをフォノンに散逸し、運動量空間で均等に分布する事が出来る。この内殻正孔・フォノン相互作用を通じて運動量の散逸が終結した後であれば、価電子帯にいる全ての電子がほぼ等しく、空になった内殻準位へ遷移出来るので、放出光のエネルギー分布を調べれば、価電子帯全体に関する情報を得る事が可能となる。
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