研究概要 |
本研究では,混合液体の転移点近傍における熱的ゆらぎと流動の動的結合に起因する非ニュートン効果,流動下不均一構造のモルフォロジーとそのレオロジー的応答,平衡から遠く離れた非平衡定常状態における散逸過程など,シェア流の存在によってはじめて現れる諸効果を,主に分光学的実験とレオロジー的手法によって調べ,その知見を相転移の普遍性に基づいて検討した。分子性液体混合物及び界面活性剤ミセル溶液の2液相分離(スピノ-ダル分解)過程における位相差及び蛍光顕微鏡観察とその画像処理から,臨界点近くでのパーコレーション構造に関する貴重な知見を得た。また熱的揺らぎを,この種のパーコレートしている物理的クラスターと見なすことにより,その静的及び動的光散乱挙動を調べた。他方,混合液体の相分離過程における濃度ドメインは,流動方向に極端に引き延ばされた,いわゆるstring相を形成する。このstring相の形成は,シェアが濃度ドメインの界面の不安定性を抑制する結果であり,シェアの解放(流動停止)によって適当なサイズに破砕し,界面張力によって再び等方的な球状ドメインを形成することが明らかとなった。この流動下での濃度ドメインの変形に関する光散乱実験から,界面の異方性に関する知見を得ている。この種のフラクタル的濃度ドメインの大変形に伴う粘性挙動はニュートン流体的振舞いをし,その二相流の粘性挙動が小貫理論に基づく非線形方程式に従うことは極めて興味深い結果であった。他方,同軸円筒型光散乱セルに封入されたシェア流の下での動的光散乱実験から,その静止内壁近傍の試料溶液に対する時間相関関数は背景流速の寄与を殆ど反映しないことなど,流動場における時間相関関数についての興味深い知見を得た。本研究課題実施期間の2年間における研究報告は学会誌等で18件,国際会議を含む学会発表等14件であった。
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