研究概要 |
本研究の目的は,海洋性島弧系の上部マントルを対象とし,海底地震観測データに記憶された遠地地震の情報を調べ,またあらたにより長周期の地震計を開発し長期海底地震観測をによるデータとを合わせて上部マントルの不均質構造を高い解像度で明らかにし,その原因となるダイナミックプロセスを解釈することである。まず,短周期海底地震計アレー観測による遠地地震P波の相対走時残差分布パターンから,ソロモン島弧下の上部マントルに,地震活動のない沈み込みプレートの存在を推定することができた。この推定には,島弧地殻構造ならびに浅部堆積構造の補正により精度を上げている。しかし,P波検出に使用した波の卓越周波数は1Hz程度であり,センサーの4.5Hz固有周波数よりだいぶ低い。限られた周波数,観測期間を拡げることは必須の要請である。本研究により1Hz型の速度センサー,長期観測を可能にするためのデジタルレコーダー(約4GB記録)を開発し,時刻精度も従来型より1桁向上させた海底地震計を開発した。 これまでの研究から伊豆小笠原島弧が海洋性島弧を必ずしも代表していない可能性がでてきた。伊豆小笠原での初期のプレート沈み込みは比較的高温であり,水の供給とあいまって特有のボニナイトを生産した。この存在が上部マントルからのマグマ供給による再溶融によるカコウ岩質地殻を形成した可能性がある。OBS観測から判明した地殻構造,上部マントルの低Q領域の存在はこの地質学的モデルを支持する。
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