研究概要 |
南部フォッサマグナは,フィリピン海プレートの北西進に伴って古伊豆 小笠原弧に所属する島嶼が15Ma以降,本州弧に4回にわたって次々に衝突付加した島弧多重衝突地帯として知られている.本研究は構造地質学的および堆積学的手法により,島弧多重テクトニクスとそれに伴う堆積作用の解明を目的としたものである.本研究により以下の点が明らかになった. (1)丹沢ブロックの衝突に関連したトラフ充填堆積物は,主としてタ-ビダイトやデブライトといった堆積物重力流による堆積物からなっている.そして,それは丹沢ブロックの衝突に伴う後背地の隆起現象を反映した礫種構成の変化と上方粗粒化傾向を示している. (2)2回目に衝突付加したと考えられていた御坂ブロックは,従来その実態が明らかでなかったが,水中火山砕屑岩類の詳細な堆積相解析により,御坂ブロックは前弧 火山弧 背弧リフトが一つのセットになっていたことが明らかになった. (3)南部フォッサマグナにおける最初の衝突地塊である櫛形山ブロックは,主として再堆積ハイアロクラスタイトや重力流堆積物からなる.これは櫛形山ブロックが前弧ないしは背弧を構成していたことを示している. (4)古地磁気の調査結果によれば,藤野木 愛川構造線以北の地域に分布する岩脈のうち2Maより古いものに時計周りに最大34度回転しているものがあった.これは,ブロックの衝突付加により衝突された側の一部が時計周りに回転した可能性を示している.
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