研究概要 |
本研究は,岩盤を対象としたエネルギー施設の地下立地や高レベル核廃棄物の地層処分等において,問題となる地下水流れの把握を試みたものである。特に水みちの形成過程を考慮することにより,これまで極めて複雑であり適切な評価手法のなかった岩盤内の地下水流れの特徴を明らかにすることにある。 まず原位置における割れ目系の調査を通して,割れ目系全体の卓越方向と水みちとなっている割れ目は必ずしも一致しないこと,単一割れ目内における水の流れは平行平板的なものではなく,スポット的に分布する流れであること,現在の応力場と水みちは密接に関係していること,水みちの形成と地質構造発達史は密接に関係していることが明らかとなった。 次にインタクトな岩石の室内透水試験を実施し,載荷軸方向の浸透特性と載荷軸に垂直な方向の浸透特性について検討した。両者を比較すると,通水方向により浸透特性が異なっており,ピーク応力時には無載荷状態に比べて約3倍程度透水係数が大きくなることがわかった。さらに微小割れ目を有する岩石の変形実験を実施し,軸応力の増加に伴う微小割れ目系の挙動について考察した。また微小割れ目を有する岩石に対して浸透実験を実施し,ピーク応力以後割れ目に沿う変位が生じ,これに伴って透水係数も急激に増加することがわかった。 2つの室内実験の最終的な目的は,インタクトな岩石に対する浸透特性と割れ目を有する岩石の浸透特性を比較することにあったが,現時点では十分な検討ができていない。今後データの蓄積に努め,検討したいと考えている。今後はこのような割れ目系の構造変化を含むような岩盤水理モデルを構築していくとともに,新たな応力ひずみ-浸透連成解析手法を開発していく必要がある。
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