研究概要 |
地層を構成する砕屑物の粒度組成から堆積環境,特に水理条件や運搬様式が推定できるという研究報告は,古くから多い.水路実験で砕屑物をさまざまな様式で運搬させ,その過程での粒度組成の変化を明らかにし,過去の堆積物から水理条件や運搬様式を推定することが,この研究の目的である. この研究で行った水路実験では,高精度の流速計の導入で,さまざまな水理条件での質の高い実験結果が得られた.その結果は,砕屑物の粒度組成から堆積時の運搬様式が推定できるというこれまでの研究結果が,一面的なもので,本質的には間違った理解であったことを強く示している.すなわち,堆積物の粒度組成は,オリジナルな物質(実験に使用した砂)の粒度組成によって基本的に支配されるのである.この研究の過程で,オリジナルの物質の粒度組成で堆積物の組成を規格化すると,同じパターンになることを発見した.特に,浮流する粒子群では,特定の粒度のものが選択的に多く含まれることはなく,ある粒度より細かいものが同じ割合で水流中に存在すること,さらに,なだれ落ちる粒子群や躍動する粒子群はごく短い移動でも,粒度分布を変化させること,乱泥流の堆積物の粒度組成は浮流によるものと同じであること等がわかった. 地層となった堆積物の粒度組成から,堆積当時の水理条件を推定することは,非常に難しいということである.また,自然界でのオリジナルな物質とは何かを知る試みは,砕屑物の粒度組成を新しい面から理解することにつながる次のステップと思われる.
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