研究概要 |
【合成研究】(1)分子内に12個のRuイオンを含む超分子,[Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6(L)_3]^+を基本骨格とするピラジン架橋直鎖状4量体の合成に成功した。内側のユニットは外側のユニットよりも還元電位が低い。(2)分子内に電気化学的ポテンシャル勾配をもつRu三核錯体の3量体,[{Ru_3-(μ_3-O)(OAc)_6(cpy)_2}-pz-{Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6(py)}-pz-{Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6-(dmap)_2}]^<3+>を合成した。(3)三核骨格間の電子的相互作用を高める目的で新規カルボニル3量体[{Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6(dmap)_2}-pz-{Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6(CO)}-pz-{Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6-(dmap)_2}]^<2+>を合成した。カルボニル配位子の脱離によりさまざまな類縁体への誘導が今後期待される。 【構造研究】2量体,[{Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6(py)_2}_2pz](PF_6)_<2+>,のX線構造解析を行った。このタイプの多量体としては初めての構造解析例である。 【骨格間相互作用】骨格間の電子的相互作用が強いことが解っている2量体[{Ru_3(μ_3-O)(OAc)_6-(dmap)(CO)}_2pz]について,1電子および2電子還元体の電解赤外スペクトルを米国Purdue大学Kubiak教授の研究室に赴き測定した。驚くべきことに,1電子還元体のCO伸縮振動は還元前(単離状態)および2電子還元体が示すシャープな2本のスペクトルの中間にブロードな吸収として観測された。この事実は,二つの三核骨格間のピラジンを介した異常に速い電子移動,即ち,骨格間原子価状態のフラクショナルな挙動の発現を示唆している。現在,この珍奇な現象の解明向けた詳細な実験を展開中である。
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