研究概要 |
燐酸イオン電極、過塩素酸イオン電極、水銀イオン電極、チオシアン酸イオン電極の開発を進め、性能テストの結果、分析定量に応用してきた。今回はタリウムイオン電極、スズイオン電極および銀イオン電極の開発のため、ニュートラルキャリアとして、1,4,7,10,13,16-ヘキサチアシクロオクタデカン(HTCO),1,10-ジアザ-4,7,13,16-テトラチアシクロオクタデカン(ATCO)および1,4,7-トリチアノナン(TTCN)を用い、電極を作製し、これら電極の電極応答性能を支配する因子、ずなわち、pH,温度、可塑剤(フタル酸ジオクチル(DOP),セバシン酸ジオクチル(DOS),2-ニトロオクチルエーテル(NPOE),添加塩(テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウムKTpClPB)等を変化させて電極の応答性能を評価した。その結果、タリウム電極では、HTCO:2.0w/w%,PVC:28.0w/w%,DOP:68w/w%,KTpClPB:2.0w/w%,スズ電極では、TTCN:3.0w/w%,PVC:75.08w/w%,DOP:21.17w/w%,KTpCl:0.75w/w%,銀電極では、HTCO:1.52w/w%,PVC:22.94w/w%,DOP:74.71w/w%,KTpClPB:0.823w/w%およびATCO:1.67w/w%,PVC:22.85w/w%,DOP:74.53w/w%,KTpClPB:0.943w/w%の組成で作製されたものが最適なものであることが分かった。選択係数を混合溶液法、連続変化法、単独溶液法で検討した。一例だが、連続変化法の結果を述べる。タリウム電極では、Fe^<3+>>Co^<2+>,Ni^<2+>,Cr^<3+>>Mn^<2+>,Cd^<2+>,Mg^<2+>>Ba^<2+>,Zn^<2+>,Pb^<2+>>NH_4^+,K^+,Na^+>Li^+であり、スズ電極では、Bi^<3+>>Ca^<2+>>Pb^<2+>,Zn^<2+>>Fe^<3+>>Co^<2+>>Cu^<2+>>Na^+であり、銀電極では、HTCOの膜の場合、Hg^<2+>,Mg^<2+>>Ni^<2+>>Zn^<2+>>Ca^<2+>,Mn^<2+>>Co^<2+>>Ce^<3+>>Fe^<3+>>Cr^<3+>およびATCOの膜の場合Hg^<2+>>Mg^<2+>>Ni^<2+>>Mn^<2+>,Cu^<2+>>Zn^<2+>>Ca^<2+>>Co^<2+>>Cr^<3+>,Ce^<3+>>Fe^<3+>であった。これらの選択係数の順序から、選択性が電荷の大きいイオンに良いことが分かった。タリウム電極では、Cu^<2+>,Ag^+の妨害が大きいことが分かり、この除去の検討を行った。また、上述の因子によるインピーダンス測定を併用して電極膜の性能を評価した。すなわち、バルク抵抗、電気二重層容量、交換電流密度、膜中のイオンの拡散係数、Warburg係数等を計算して、電極膜でのイオン交換の挙動、膜へのイオン輸送、膜界面への移動過程の解明を行った。交換電流密度比と電位差法による選択係数の間には相関があることが分かった。電極膜での電位応答はイオン交換反応と膜内での錯体形成機構の複雑な関係によって進行することが明らかになった。
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