研究概要 |
高等脊椎動物のゲノムDNAがGC含量のMb(メガベース)レベルでの巨大な区分的構造よりなり,その構造が染色体バンド領域と関係することを明らかにしてきた.染色体バンドならびにGC含量巨大モザイク構造の機能上の意味と,形成された進化機構を知る目的で,バンド境界と考えられるGC含量巨大モザイク境界の構造解析を行なった.ヒト染色体6p21.3領域に位置するMHCクラスIIとIII領域の境界にシャープなGC含量の変移点を見出し,高精度分染バンドの境界である可能性を指摘した.GC含量変移点の共通構造を明らかにする目的で,MHCとその周辺領域でのGC含量の変化を解析した.コスミドの連続クローンの作製とそのGC含量の測定を行った結果,クラスII-III-Iのそれぞれの機能領域とGC含量ドメインとが対応することが判明し,3箇所のGC含量変移点を明らかにした.共通構造の存在を知る目的で,各変移点領域の塩基配列の解析を行った.2箇所のGC含量変移点では塩基配列の解析を完了し,両方の変移点において,Alu配列の高密度クラスターに隣接してポリプリン/ポリピリミジン配列が存在すること,ならびに共通の特徴的な配列の存在を確認した.DNA複製タイミングはバンド境界で転換すると考えられる.MHC領域のバンド境界の候補であるクラスIIとIIIの境界近傍の複製タイミングを塩基配列レベルで詳細に測定した結果,PABL(Pseudoautosomal boundary-like sequence ; 偽常染色体領域境界様配列)を含む低GC含量のクラスII領域側は,S期開始後3-4時間目に複製するのに対し,高GC含量のクラスIII領域側は1-2時間目に複製し,両者には2時間の明瞭な差があり,着目のGC含量変移点がバンド境界の要件を満たすことが明らかになった.Alu配列とポリプリン/ポリピリミジン配列が高密度に存在する15kbの領域において,約1時間の差がみられ,複製フォークの進行が停止している可能性が示唆された.この領域にはSAR/MARが存在し,核内構造に強く結合していることも判明した.着目領域に存在するNOTCH4等の新規遺伝子類の構造も決定した.
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