研究概要 |
外科的に潜伏精巣を誘起すると,TNF-αreceptor,TGF-β2,3,FasのmRNA発現が増加し,生殖細胞にアポトーシスが増加した。また,離乳後の乳腺の退縮機構を同様に解析した結果,離乳1日後にはTGF-β1,TNF-αのmRNA発現が増加した。P53ノックアウトマウスから乳腺を摘出し,10%血清を含む培養液で細胞培養し,抗Fas抗体およびTNF-αを添加したところ,アクチノマイシンDの共存下で,抗Fas抗体および,TNF-dは約80%以上の細胞を殺した。また,機能的なFasあるいはFas-ligandをもたない,あるいはその両方を持たないマウスでも離乳により,乳腺の細胞死が誘導されたことから,Fas系およびTNF-α系が乳腺の細胞死に独立に関与していることが明らかとなった。また,妊娠依存性乳腺腫瘍は妊娠中期に発症し,分娩とともに急激に退縮するが,この退縮はアポトーシスによることを明らかにした。 周生期のエストロゲン投与により,膣の不可逆的増殖がおこり,jun,fosの発現が恒常的に増加していること,また,ジエチルスチルベストロール,タモキシフェンの周生期投与により骨組織の恒久的減少がおこること,精巣,卵巣のステロイド産生能を調べ,特に卵巣のステロイド産生能を変化させていることを見出した。正常動物における,性周期に伴う細胞増殖と細胞死との関係を調べたところ、性周期に伴うラット子宮・膣の退縮はアポトーシスによるものであり,上皮細胞における細胞死と細胞増殖には負の相関がある事を明らかにした。 新たな問題として,環境中に放出された化学物質に女性ホルモン様の作用を示すものが多くみいだされ、我々は新たな用語「環境ホルモン」を提唱し,研究を開始している。その一端として,アフリカツメガエルを卵からエストロゲンを添加された水中で飼育することにより,頭部の形態異常,エストロゲン受容体発現等を明らかにした。海産メダカを用いた研究も行っている。
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