| 研究概要 |
本研究の目的は,特異な性質が知られている高温超伝導体の磁束状態の性質を明らかにすると同時に磁束の運動を熱磁気効果の立場から調べることである.成果は大きく分けて,直接熱磁気効果に関するものと磁束状態の静的性質,特に相転移,に関するものの2つに分類される.
1)熱磁気効果:異方性の異なる3種類の高温超伝導体YB_<a2>Cu_3Oy,Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>,La_<2-X>Sr_XCuO_4に関してエッチングハウゼン効果とネルンスト効果の測定をおこなった.磁場と結晶軸,および磁束運動の方向によって規定される種々の配置に関してネルンスト効果の測定を行い,磁束運動の異方性及び磁束の持つエントロピーの異方性を求め,これらの異方性がおおよそ有効質量の異方性によって決まることを明らかにした.しかし,磁束の持つエントロピーの絶対値は,従来の第2種超伝導理論と磁束フローモデルから期待されるものと一致せず,高温超伝導体の特異性が示され,今後さらに検討すべき問題として残された.また興味ある現象として,磁場をc軸に平行にかけたときのネルンスト電圧は物質によらず一定であることがわかった.この結果がどのような意味を持つかについて検討中である.2)磁束状態:本科研費補助金によって購入した大容量高温炉を私用してYB_<a2>Cu_3Oy単結晶の作製を行い,さらに1軸性圧力のもとで熱処理することによって,双晶のない良質な単結晶の作製に成功した.この非双晶単結晶を用いて磁束格子の融解相転移を研究した結果,磁場の増加に伴って磁束格子が不規則固体に変化する磁束系における磁場誘起規則一不規則転移を発見した.さらにこの磁束系の規則一不規則転移が,母体結晶の不規則性の増加とともに低磁場で起こりやすくなることを明らかにした.
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