1次元S=1/2量子スピン反強磁性体Ca_2CuO_3は0〜6000cm^<-1>にCuGeO_3は0〜600cm^<-1>に幅の広い2-マグノン散乱スペクトルを示す。これらの高エネルギー端は2πJ(Jは交換相互作用)に対応し、古典的2-マグノン散乱の高エネルギ端2Jよりはるかに高エネルギーである。1次元反強磁性体の2-マグノン散乱は禁止されているにもかかわらず観測されるのは、鎖間相互作用よりもむしろスピン-フォノン相互作用が重要であると考えられる。高温超伝導体のキャリアーをドープしない絶縁体でもラマン散乱不活性なA_g対称2-マグノン散乱がアマン活性なB_<1g>対称2-マグノン散乱と同程度の強度を持っているのはスピン-フォノン相互作用が重要であると考えられる。 La_2NiO_<4+δ>はδ=0.1以上にキャリアーをドープしても絶縁体でδ=0.125では長距離秩序を持つスピン密度と電荷密度の分離が起こることが分かっている。δ=0のとき1500cm^<-1>以下の電子ラマン散乱は温度の上昇と共に増加する。2-マグノン散乱は温度の上昇と共に強度、エネルギー共に低下して、450Kで消失するが、500K以上で高エネルギー側に再び現れる。δ=0.02ではδ=1のときより高エネルギーで温度変化は小さい。このことからキャリアー密度が非常に小さいとき(δ=0で450K以下)は一様に分布するが、それ以上の密度ではスピンと電荷密度の分離が起こることを示している。δ=0.02のときはキャリアーの存在する場所のフォノン・エネルギーが低下し、最高エネルギーのフォノン・ピークが2本に分離する。δ=0.02のときは高温超伝導が抑制されるLa_<2-x>Ba_xCuO_4(x=0.125)と同じLTT構造をとる。このとき電子散乱スペクトルは80K以下で先の最高エネルギーのフォノン・エネルギー以下の散乱強度が減少し、それ以上の強度が増加する。すなわちこのフォノンが関与してフェルミ面近くの電子状態密度が減少することを示しており、La_<2-x>Ba_xCuO_4(x=0.125)の超伝導の抑制に関係していると考えられる。 超伝導マグネットと関連光学系が納入され、これから磁場中ラマン散乱の実験を行うところである。
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