研究概要 |
環八雲は,よく晴れた夏の日の午後,東京都区部の西側を南北に走る環状八号線付近上空に出現する積雲列である.環八雲はその特異な形から,大気汚染との関わりについて,東京都議会で取り上げられ,マスコミにもしばしば報道された.研究代表者はまず,最初に南関東の自治体(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)による都市気候資料を収集・解析し,環八雲の形成機構を推定した.次いで,東京都立大学工学部,東京商船大学,東京都環境科学研究所,気象庁気象研究所の協力を得て,1995-1997年8月上旬,東京都の江東区,世田谷区,八王子市でライダーネットワーク観測を実施し,環八雲とその背景にある東京の大気環境の空間構造を解明しようとした.この間,人口密集地での安全なライダー観測ため,石川島播磨重工業k.k.光プロジェクト部と共同して,目に安全なレーザーを光源とする可搬型境界層ライダーを開発した.1996年には念願の航空機観測を実施した.このような総合観測の結果を基に,環八雲のモデリングを行った. 主要な研究成果は,次の通りである. (1)都市気候資料の解析により,環八雲の発生条件として,(1)東京湾からの海風と相模湾からの海風の収束,(2)ヒートアイランドによる上昇気流,(3)エ-ロゾル(大気浮遊微粒子)の増加等が明らかになった. (2)ライダーネットワーク観測により,環八雲は都市混合層上部と自由大気との境目(高度約1km)に出現することがわかった.この高度では,環八雲の凝結核となりうるエアロゾルと水蒸気が多く存在する. (3)航空機観測により,都市混合層の中では自由大気中に比べて,エアロゾル数密度が高く,粒径分布はほぼ一様で,ススなどの人為起源エアロゾルが多く観測された.
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