研究概要 |
倒立顕微鏡にセットしたマイクロマニプレーターにより,植物の特定染色体や染色体部分をガラス針によりマイクロダイセクションし,マイクロチューブに回収した。それらから,種々のプライマーを用いるPCR法により,特定染色体や染色体部分からDNAを増幅した。増幅したDNAをプローブとして,in situハイブリダイゼーションを行い,染色体特異的なペインティング法の開発を試み,次の結果が得られた。 1 18SrDNAと5SrDNAは単離した単一の染色体からの,増幅が可能であった。 2 タマネギの第7染色体の5S rDNA遺伝子座が2カ所にある。その遺伝子座を含む染色体断片をマイクロダイセクションにより単離し,5SrDNAに特異的なプライマーを用いるPCRとin situハイブリダイゼーションにより,5SrDNAの長さと遺伝子座の対応関係を明らかにした。 3 タマネギの付随体をもつ第6染色体は同定が容易であるので,この染色体をマイクロダイセクションにより単離し,DOP-PCRを行ってこの染色体に含まれるDNAを増幅した。この増幅したDNAをプローブにしてタマネギとネギの雑種であるワケギの染色体に染色体ペインティングを試みた。その結果,タマネギの染色体が一様にシグナルを示し,タマネギ由来の第6染色体もネギ由来の第6染色体の検出も出来なかった。 4 スイバのY染色体をマイクロダイセクションにより単離し,DOP-PCRを行ってDNAを増幅した。このDNAをプローブとし,雌のゲノムDNAを多量に加えるin situハイブリダイゼーションを行った。Y染色体にシグナルが見られ,ペインティングを行うことができた。 染色体ペインティングはスイバのような特定種の特定の染色体では可能であるが,普通の染色体にはゲノムに共通の重複DNAが多量に含まれており,現時点では個々の染色体のペインティングは困難であった。
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