研究概要 |
(1)走査型電子顕微鏡内微細切削加工法の検討 微細加工に切削加工法を適用するためには,ばりの発生と微細形状の変形を抑制することが重要となる.これらの問題を解決するために,振動を利用して,切削力を大幅に低減し得る新しい切削加工方法を提案した.楕円振動切削加工法と呼ぶ本手法を用いて,走査型電子顕微鏡内部において微細2次元切削実験を行い,本手法の基本特性と工具振動条件の影響等について検討を行った.その結果,楕円振動切削加工法は,普通の切削加工法および従来の振動切削加工法と比較して,以下のような効果を持つことが分かった. (a)切りくず厚さが大幅に減少する(約8分の1). (b)切削力が大幅に低下する(実加工時で5分の1程度,背分力については時間的な平均値でほぼゼロになる). (c)同体積を除去するのに必要なエネルギが大幅に減少する(約3分の1). (d)仕上げ面性状が向上し,バリの発生が抑制される. (2)走査型電子顕微鏡内マイクロマニュファクチャリング装置の開発 走査型電子顕微鏡内部で,加工プロセスを監視しながら微細な3次元加工を行うためには,従来にない加工機およびその機械要素が必要となる.ここではその要素技術として,著者らによって考案された新しい駆動原理(Walking Driveと呼ぶ)を用いて,高剛性,高精度のXYΘテーブルを開発した.まず,プロトタイプの装置を用い,レーザフィードバックシステムを開発してナノメートルオーダの超精密軌跡制御および位置決めに成功した.次に,走査型電子顕微鏡内部に組み込むことができる小型XYΘテーブルを開発し,超精密位置決めを行い得ることを確認している.同時に検討を行ったインパクトドライブ方式の切込み装置と組み合わせることにより,走査型電子顕微鏡内マイクロマニュファクチャリング装置を完成することができると考えられる.
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