研究概要 |
1.表面粗さを持つ転がり-滑り接触面において,(1)転がり方向に直交する横方向粗さの一次元流・二次元弾性変形の場合,正弦波状粗さモデルあるいは台形状粗さモデルを用いて膜厚比が2より大きい範囲で表面粗さの大きさを変えた圧力分布・膜形状・内部応力の計算を可能とした。(2)二次元流・三次元弾性変形となる旋削面のような転がり方向(縦方向)粗さの場合にも,軸方向に周期境界条件を適用することにより収束解を得ることを可能にした。いずれの場合もニュートン・ラフソン法が最良であった。(3)粗さが大きい場合はEHL計算の収束解が得られなくなるが,き裂伝ぱ解析のための内部応力は弾性接触として計算したもので十分推定できることが明らかになった。2.半楕円表面き裂・二平面構成あるいは三平面構成など複雑な三次元形状のき裂に対して体積力法による応力拡大係数を計算する一連の計算プログラムを完成させた。これまでの粗面の直接接触状態と粗面EHL状態における表面き裂の応力拡大係数の計算により,異なる粗さ形状をもつ部分と接触して突起位置とき裂位置の関係が接触の繰り返し毎に変化することが転がり疲れき裂の伝ぱに重要な役割をもっていることが明らかとなり,転がり疲れの実験結果を理論的に裏付けている。3.実験的には,転がり疲れき裂の伝ぱ過程の顕微鏡下でのビデオ撮影による連続観察を行い,低速側と高速側のき裂発生と伝ぱの特徴や粗さの方向性の影響を調べ,(1)横方向粗さの場合容易なEHL膜形成によりピッチング寿命が増大することや,(2)45°方向粗さの場合の寿命が短いこと,(3)高硬さ円筒を低速側にしたときのき裂発生が接線力による引張り応力に起因すること,(4)高速側にもき裂は発生するが表面近くでの内部への進展方向が接触点の移動方向と逆であり破壊力学的伝ぱ解析と対応していること,などの知見が得られた。
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